先日の夕方、もも(うちの猫)がベランダに向かって、「んにゃっ!」「ふにゃっ!」「ふぎゃっ!」とうるさく鳴いていた。なんだろうと思ってベランダから外を見てみると、前の芝生で近所のおっちゃんが釣りの練習をしていた。釣糸をひゅっと遠くへ飛ばし、リールをぐるぐると巻いてたぐり寄せるということを繰り返しているのだが、そのたびに赤い浮き(?)が芝生の上をずるずると虫のように移動して、いかにも猫に狙ってくださいと言わんばかりだ。
「おまえをじゃらしてるんじゃないの」と、言い聞かせたが本人・・・本猫はすっかりその気になっていて、眼をらんらんと輝かせたままひとりごとを言い続けている。しょーがないんであとで猫じゃらしで遊んでやった。(でもこれだともう飽きたのかあんまりのらないんだが)
いや、ちがうちがう。猫の話じゃないです。今回のテーマは恋愛関係について。ちょっと長めなんでウンザリするかも。とあらかじめ断わっておきます。
最近、「尽くす女」というタイプが絶滅しかかっているらしい。いわゆる演歌調の女性だ。男がどんなに身勝手だろうと、ひたすら愛し、許し続ける女。理由なき無償の愛を捧げてくれる。男のロマンでしょうが。
しかしこの手の女性も探せばまだまだいる。わたしの身近にも少なくとも二人はいたね。彼女たちの愛・・・というより、忍耐というかがまん強さときたら、そりゃもうわたしみたいながまんのきかない人間には理解不能ってなもんです。
具体的にどういうことか、というと、とにかく、相手の男がどんなに勝手だろうが、彼女を犬の子みたいに邪険に扱おうが、利用しまくりの浮気しまくりだろうが、そのくせして自分のほうは亭主ヅラして束縛しようが、ひたすら許す。耐える。がまんする。「束縛するのはわたしを愛している証拠だから」などと、実に都合よく自分を納得させることすらできる。あんなクズ男のどこがいいんだ、目を覚ませなんて言ったって聞きゃしない。よくあるでしょう、性格もよければ顔もいい、頭だっていい女性が、なんであんな最低男に献身的に尽くすんだ、他にもいい男がいっぱいいるはずなのに、というパターン。不思議でたまらないよね。そりゃそうだよ。だって理屈じゃないんだもん。
それは愛の魔法なのです。
「愛」というのは理屈ではない。理屈でないからこそ怖いのだ。それは相手を選ばない。相手がどんなクズだろうとそんなことまったく関係ない。「立派な人だから」とか「性格がいいから」とかいちいち理屈で考えて恋しているわけではないからだ。それはどこか別の次元からやってくる。そして燃え上がっている間は、相手の悪いところなど何ひとつ見えない。
しかし、それはある日突然、冷める。
やってきたときと同じく唐突に、ぱたっと冷めてしまうのだ。
彼女たちに、急に冷めた理由を聞いてみても、
「なんかこの人自分のことしか考えてないんだなあ、と思ったらもう嫌になっちゃって・・・・」
「関係修復のためにいちおう、努力はしたんだけどね。<わたしも悪いとこ直すから、あなたも直して、仲良くやっていこう>って。でも結局、何も変わらなかったし・・・・」
そんなのずっと前からわかりきっていたことじゃん。何で今ごろ???と思うようなことばかりである。
実際のところは、理由なんてほとんどないんだろうと思う。彼女たちの語っている「別れた理由」は、たいがい後で考えてくっつけたものだ。しかし、よく考えてみればこれは当然のことなのだ。理屈でなく愛したものは、理屈でなくいつかは冷める。これはこの世の道理である。
だが、こういう場合、相手のクズ男・・・もとい、尽くされていた男性はどう思うだろう。
きっと彼は、今までどんな勝手なふるまいをしても、「文句があるならいつでも別れてやるぜ」的態度で接しても、自分にひたすら尽くし続けてきた女性の愛を、永遠にそこにあるものと錯覚してしまったはずである。たとえば、母親が息子を愛するように、こちらが裏切っても相手からは自分を決して見捨てることなどできないのだと。
あるいは、
「オレはどんな勝手をしても許されるだけの値うちがある男なんだ。それだけの魅力があるんだ」
というカン違いの自己肯定に陥ってしまったかもしれない。それとももっと単純に、「この世には<尽くす女>というのが存在して、運よくそいつに当たったら一生尽くしてもらえる」
などと、都合のいい幻想を抱いてしまったか。
しかし、その愛が突然なんの前触れもなく、消えてなくなったら。
まずボーゼンとするだろうね。信じられないだろう。いままで自分に熱烈に恋していた女が、突然手のひらを返したように冷たくなるなんて。そんなことありえるはずがない、ウソに違いない。どんなに邪険にしてもオレから絶対離れられないほど、オレの魅力に夢中だったはずだ。
そして茫然自失から立ち直った後は、彼女に電話をかけまくり、待ち伏せし、ひたすら「なぜなんだ?」攻撃をする男が一人できあがる。(最近けっこう多いみたいです。こういう切りかえができなくてこじれるタイプ)
なぜなんだもなにも、あんたそもそもそんなこと言える立場?
と、客観的にみれば呆れてしまうのだが、本人は、
「いままではうまくいってたはずだ。オレが勝手をやって、彼女が許す。これでバランスがとれていたじゃないか」
などと本気で思っているふしがある。そういうのを「うまくいっている」とは言えないと思うんだけども。片方は思いのままにふるまって気持ちよく生きているかもしれないが、片方は常に許したりがまんしたりしなければならないなんて。恋愛関係(人間関係)ってもっと対等でないと長続きしないもんでしょう。
しかしとにかく彼のほうは別れたくない。
「好きなんだ」
「悪いところがあったら直すから」(全部だよ)
なんて、つきあっていたときには一度も言ったことのなかったようなセリフまで飛び出す。だが、彼女のほうはもうすっかり冷めきっている。あれだけ踏みつけにされても、友だちにたしなめられても、
「わたしが好きなんだからいいの」
と言い切っていた、あの一途な愛は今や片鱗も見当たらない。空の彼方から突然やってきた理由のない恋は、また理由なく空の彼方へと飛び去っていってしまったのであった。−完−
こういう「尽くす女」はけっこうあちこちにいる。「彼女の愛が消えない限りは」どんな身勝手をしてもあなたを愛してくれるだろう。
だが、それでいい気になっていると、まったくなんの前触れもなく彼女は去っていってしまう。その時になって悪いとこ直すからなんて言ってももう遅い。だからといって、はじめから身を慎んで彼女に優しくしていれば、絶対別れるなんて言い出さないか、というと、そんな保証もどこにもないんだけどね。
こういうタイプの女性は、理屈ではいっさい動かないからだ。その時その時の気分のおもむくまま。相手の性格が極悪だろうと、自分が夢中な間はひたすら耐えて尽くし、いったん冷めたらなんの未練もなく風のように去ってしまう。相手がどんなに心を入れ替えようと、戻ってきてくれと必死で懇願しようとお構いなし。ある意味、こんな怖い女はいないかもしれない。
よーするに、「なんの理由もなく尽くしてくれる女」は、「なんの理由もなく去ってしまう」ものだ、ということです。いや、それでこじれたカップルが身近にいたんだよね。男性のほうが正気なくしちゃって、もう少しで刃傷沙汰でしたよ。女性のほうはまた新しい男性に「尽くして」いるようですね。いつまで続くかは解らないけど・・・・。
あなたもこういう女性に、「尽くされたい」ですか?
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