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2001年4月14日

神田うのの真似はしてません

また転んだ。
昨年は自転車で転んだのだが、今度は歩いていて転んだ。
排水溝につまづいたのだ。


月曜日にお昼ご飯を買いに会社から出たところで、近くの生協の駐車場のアスファルト上でみごとに転び、したたかに右膝を打ちつけた。去年の怪我と同じ場所だ。
それだけならともかく。今度は左の目の下、頬骨のあたりにも擦り傷を作った。
つまり、顔面も打ったのである。
見ていた人がいれば、真っ昼間に生協の駐車場で思いっきりうつ伏せになっている女を何者かと思っただろう。ていうか見るな。あっち行け。
ともあれ、痛みと屈辱によろばい歩きながら、血だらけでパンストの膝も破れたままわたしは会社へ戻った。
従業員ご一同様はそのみじめな姿を見て一瞬絶句したあと、爆笑した。


「また転んだの!?」
「自転車にも乗ってないのに、ただ歩いていただけで?」
「転ぶにしても、なにも顔から転ばなくても」
「女の自覚はあるのか。なぜ顔をとっさにかばえないのか」
神田うの・・・
「おつかいに行って転んで帰ってくるって、幼児じゃないんだから」
「というより、もう歳なんじゃ・・・」
言いたい放題である。


「あんなところに排水溝があったら、誰だって転ぶじゃないですか!!」二度目のせいか誰も同情してくれないので、わたしは逆ギレした。
「転ばない。転んだことがない」
「転びそうになってよろけても、体勢を立て直して踏みとどまる」
「よしんば転んだとしても、顔は怪我しない。とっさに手をつくものだ。大人なんだから」
どうしてもわたしを異常だと言いたいらしい。
こんなことなら排水溝がなんて言わず、「バナナの皮が落ちていたんです!誰だってアレを見たら転ぶじゃないですか!!」と言い張るべきだった。


半泣きのまま、Yさんの車に乗せてもらって、近くのM病院へ行った。
「どうして前を見て歩かないの」。医者はあきれた。看護婦さんは笑いをこらえている。どこへ行っても笑われる運命なのか。「ああ、排水溝ね。よく転ぶよね〜。あんなもの危ないから全部埋めちゃえばいいのにね」と言ってくれる人は誰もいない。
「あの、前にも転んで、マキロンつけて放っておいたら化膿したんです。しかも、薬物アレルギーもあって、病院でヒビテンという消毒薬つけてもらったら、かぶれました」
「ヒビテンでかぶれるの? それも珍しいね。じゃ、しょうがないからイソジンにしとこうか。それと、ゲンタシンて軟膏つけておくからね。これ、家でもつけられるように処方しておくから」
前回は放っておけば治ると思って悪化させてしまったが、今回はその日のうちに病院で消毒してもらった。前回と違うところは、顔にも擦り傷を作ったことだが、「深い傷ではないし、骨も大丈夫だね」と言われたので、さほど心配することもないらしい。これで完璧だ。


「傷負けする体質らしいから、明日も来て下さい」と言われたので火曜日にも仕事中時間をもらって病院へ行くと、月曜日とは違うお医者さんだった。
「どうしたの、その顔」と再び訊かれて説明しようとしたら、「排水溝につまづいたんだよね」と昨日の看護婦さん。なんで覚えてるんだよ。
それだけならまだいいが。水曜日に三たび消毒に行ったら、火曜日の医者が診てくれている所に月曜日の医者が現れ、「顔は、顔。顔の傷どうなった」とか言ってのぞきこんでいる。看護婦さんもかわるがわる見に来る。この程度の怪我の患者に、なんなんだあんたらのその態度は。
「排水溝につまづいて転んでしかも顔まで打った人」として院内で笑いものになっているに違いない。
みんな嫌いだ。
とにかく傷は順調に治癒の方向。というか、もう表面はほとんど乾いている。跡が残らなきゃいーなーという心配だけだ。


異変は木曜日に起こった。
左目のあたりが、うっすら腫れてきたのである。
傷そのものは治ってきているのに、関係ない目元が腫れるのが理解できない。さらに膝も赤くなってきている。
医者も首をかしげた。「イソジンが悪いのかも。これでおかしくなる人はめったにいないんだけど」と言って、イソジンはやめてゲンタシン軟膏だけつけた。
ところが恐ろしいことに、金曜日には左まぶたの上まで腫れあがり、目が開かなくなってしまったのである。
「ギャッ!!」見た瞬間思わず鏡の前で楳図かずお風の叫び声を上げた。四谷怪談だ。
母も完全にびびっている。実の親までびびらすような顔では会社に行けない。仕方なくその日は会社を休み、デパートみたいな市立の巨大総合病院へタクシーで走った。


結論から言って、原因は「ゲンタシン軟膏」だったらしい。
ほとんどアレルギーの出る人などいないというポピュラーで軽い抗生剤入り軟膏。
怪我をするたびに使えない薬が増えていく。薬物アレルギーの見本市のような体質だったのである。
ていうか何で毎回毎回すり傷だけなのにこんなに病院通いしなければならないのか。薬という薬を片っ端から拒否しまくる頑固な体質は性格にも似て。まさに現代医学の恩恵を受けられない女。
交通事故で大怪我したときには、誰かぜひ、いい心霊治療師を紹介して下さい。



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投稿者 : ナツ at 2001/04/14 | カテゴリー : 散文的日常
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