死の泉
皆川 博子
死の泉(ハヤカワ文庫)読了。長編だが、読みやすい文章だったのでサクサク読めた。
(以下多少ネタバレ)
第二次世界大戦・ナチ・人体実験・畸形・去勢歌手とくれば、さぞかし凄惨で後味の悪い話になるんだろうなあ、と思いながら読んでいたので、想像していたほどひどい話ではなかったことにいささか拍子抜け。
人工的に二人の人間を癒着させて云々ってところから、ゴシックミステリー版「孤島の鬼」という連想をしてしまったのが敗因か。乱歩の方が明らかに嘘っぽいのに凄味は上だ。どうしてだろう。
それと、前半はヒロインの一人称なので、彼女に感情移入して読んだのだが、後半からべつの登場人物の視点に変わり、しかもヒロインが正気を手放して幸せなあっちの世界に逃避してしまうので、葛藤が消えるのだ。
精神が死んでしまった人間にどんな苦難が襲いかかろうとも、それは苦難とは呼べない。外側をすべり落ちるだけだ。「しゃぼん玉の中へは庭は入れません。周りをくるくる回っています」 byコクトー。
解説で、「やがてこの世の地獄を見ることに」って書いてあったのに、見てねーじゃねーかよー。地獄ってのは地獄を見ながら死ぬことも狂うこともできないことを言うんだ、とか文句を言いつつそこまで救いようのない話を求める自分が不思議になってきた。いいんだよ。これは。ミステリーなんだから。ミステリーを楽しめ自分。
そういえばわたし伏線を思いっきり見逃してるっぽいな。最後に意味不明な箇所があった。もう一度はじめの方を読み直さなくては。というわけでこれから読もうという人は伏線に気をつけてください。
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