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2001年9月25日

その瞳にうつるもの

葉芝真己のコミックスはコンプリートした。中でも、冬水社いち好きコミックス「その瞳にうつるもの」という短編が、重いテーマながらなかなか。


代理教員として高校に赴任した新米教師・池内尚輝は、暴力事件を起こして長期停学になっていた宗嘉という生徒と出会う。物静かだが殺気のある、どこか肉食獣のようなイメージのある宗嘉の、進路志望調査票に書かれた言葉は「オランウータンになりたい」。


ある日、ケンカを止めようとした池内に、宗嘉は手ひどい怪我を負わせてしまう。彼を停学にしないために必死の様子の池内に、宗嘉は告白する。「俺の身体に残ってる縫い傷やヤケドの痕は、ワルさしてた勲章じゃない。9歳の時に保護されるまで、俺は母親から虐待を受けていた


昔のことを思い出させるささいな言葉に、感情が噴きあがり止められなくなる。だから誰も傷つけないために、「森の中で、群れを作らずに暮らすオランウータンのように」たった一人で生きていきたい、という宗嘉。
池内は、「おまえがキレて自分をセーブできない時は、俺がストッパーになってやる」と約束する。しかし拳法部出身で、暴力事件を起こし続けていた宗嘉を、ハク付けのために仲間に引き込もうとするグループがいる。どうしても仲間にならない宗嘉を思い通りにするため、彼らは池内に狙いをつける。



「なーんだ。よくある熱血教師ものじゃん」と思うだろうが、しかしそこが少女マンガ。そこが葉芝真己。
池内は大学出たての、頼りないながら中性的な美形で、宗嘉はでかくて精悍な大人びた眼をした高校生。ポイントを押さえている。誇り高く凶暴な野生の狼が、ひと噛みで噛み殺せるはずの子猫かなんかに手なづけられて、飼い犬のように鼻面を引きまわされる、という関係性は、少女マンガ読みにとって王道である。
その池内も実は施設で育った過去を持つところで、「見捨てられた子供どうしが寄りそいあい、失ったものを取り戻す」癒しの物語のパターンだな、ということにはすぐ気づくんだけど。
パターンでも何でもやっぱり泣ける。よかった。


まあこれで池内のキャラがGTOだったり金八先生だったりしたらシャレにならないんだけども。だってこの二人が疑似恋愛的といえるほど強い関係性になるところがいいんだし。
最後、宗嘉が冷え切った関係だった養父母の家を出て、池内とふたりで暮らしはじめるところもいい。
「たった一人で生きるオランウータン」にはなれなかった、でかくて不敵な宗嘉が、華奢でキレイな池内に、「先生、頭なでてよ」と、無愛想に甘えるところなんか萌え。
これが、もしも武田鉄矢・・・。
死ぬ。勘弁してくれ。(悶絶中)



余談だが、葉芝真己は少女漫画家にしてはアクションシーンがうまい。絵に動きがあるし、面倒なポーズでも描けるだけのデッサン力もあるからね。
セリフの中によく、K1だのアルティメットだのフルコンタクトだのかかと落としだのアンディ・フグだのという単語が出てくるところを見ると、どーもこの人格闘おたくらしい。
本人も乱闘シーンが大好きらしく、どのマンガ読んでも必ず主人公がケンカしてる。しかもふつーの少女漫画と違って、「そんな程度の蹴りじゃダメージになんねーよ。入ってないじゃん」とつっこむスキもないくらい、体重かかった拳で敵が叩きのめされてます。あのエルボーがヒットしたら歯ぁ折れるわ、ぐらいの。
こういう絵を描ける人で思い出すのは、吉田秋生と樹なつみくらいかな。



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投稿者 : ナツ at 2001/09/25 | カテゴリー : コミックス
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