俗物。
あんなわかりやすい俗物記者を、「信頼して」独占インタビューなんぞに応じたマイケルの気が知れない。
マイケルの強固なセルフイメージである「夢の国に君臨する永遠の王子さま」の幻想を理解できるようなタイプじゃないだろう。どう見ても。
まあ、「ボクはこんな売名めあての記者にも簡単に引っかかってしまうような無垢で単純な子供なんだ。だから罠にかかって性犯罪疑惑をかけられるようなヘマをやらかしちゃったんだよね。アオッ!!」・・・ということを無言のうちに訴えるための演出である可能性はなきにしもあらず。だったら納得する。
あの番組を観た視聴者の多くは、
「整形オバケで肌を脱色してるくせにしらばっくれるのはいただけないけど、けっこう純粋でカワイイんだね、マイケルって。
それに比べてあの記者なに?ワイドショーの突撃レポーター並みにツッコミ所が浅くて、偏見だらけじゃん」
とか、そんな感じの感想を抱いただろうから。
どんなに頭が弱く見えたって、あれだけ成功しているスターが見かけ通りだなんて話は信じない。
マイケルはセルフプロデュースで売ってきたアーティストだから、頭は切れるだろうし克己心もあるだろうし人を見る目もあるはずだ。でないと早晩、酒か麻薬か性的スキャンダルで自滅するだろうからね。
自分の面倒を自分で見られない生活無能力者だったとしても、マネージメントをする人間を選ぶ目は必要だし、それがなければシビアな芸能界では即食い物にされてしまう。
変人ではあれど、シビアで頭が良くて疑い深い男なんじゃないかとわたしは見ている。
だからバシル記者をわかりやすい悪者に仕立てて、あんな俗物にコロッと騙されて懐に入れてしまうバカさ純粋性をアピールしたのだ。
とはいうものの、「意図的に悪者にした」ことがバレバレでは困るので、「あのインタビューの編集は偏見に満ちている。人生においてもっとも裏切られた」などと憤慨して見せて後から反論番組なんか作っちゃったりする。
被害者の位置に納まる手際もバッチリ。
バシルと最初から示し合わせてこういう展開になるようにしたんじゃねーのかとも思うけどさ。だってあまりにもわざとらしすぎるんだもん。
男の子は無意識のうちに男親を自分の目標とすべき完成像として仰ぎながら育つので、子どもの頃にその像がマイナスイメージに転化してしまったら、相当混乱する。道標が失われるわけだ。
父親が愛情深い男であれば、音楽的才能やプロデュース能力はまぎれもないものである以上(一世を風靡した『ジャクソン5』を作り上げた人物)、マイケルは心から父親を尊敬し、歌とダンスの才能の源となった黒人の血を誇り、自らのルーツを誇っただろう。
だが肝心の父親が、目標どころか自分の中の凶暴な血の象徴になってしまっては、それを根絶するしかない。「自分の中の父親の要素」を必死に否定して生きていくしかないのだ。
男であること。大人になること。黒人であること。
全否定。
自分の子どもの母親(というより卵子提供者)に白人ばっか選ぶのも、自分が完全な白人になれないのなら、子孫の代で自分のルーツを根絶しようという強迫観念の賜物という気がして、怖い。
だいたい、どうやったら有色人種があそこまで完璧に全身漂白できるんだよ。何らかの薬物投与や外科手術の結果なんだとしたら、絶対長生きしないだろうな。
それでもそこまで必死なのは、父親の存在に端を発するのではないかと想像してみると、ちょっとだけマイケルの気持ちが分かったような気分になる。
つーか。こうでも理屈付けしないと、「白人だって日焼けして黒くなるだろ。それと同じ事さ。自然な変化だよ。成長しただけだよ」とか、無茶苦茶なことばかり言い張りやがるマイケルさんの唇を両側から思いっきり引っ張って、「そんな嘘ばっかりつくのはこの口か?この口か!??」と小一時間問いつめずにはいられなくなるんで。
あと不二子ちゃん。ボンドガール風もバカ女風も許さない。必要ならいくらでもバカ女のふりが出来るけど実は相当頭が切れて屈折していながら欲望には忠実、という役どころで行ってほしいのことよ。
ミニー・ドライバー(※)も語ったとおり、ハリウッド映画のヒロインって単純バカばっかりでイライラするからな。作り手の女に対するイメージが貧困すぎるからそうなるんだと思うわ。
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