Banana fish
吉田 秋生
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掲示板で吉田秋生の名作マンガ「BANANA FISH」の話題が出たので、どうせなら更新ついでに再び語ってしまおう。
吉田秋生が昔「アッシュは体育会系のオネエだ」と表現してましたが、
少女マンガの王子様役ではなくて、女の子が「自分が男だったらこうなりたい」
という理想としての男だったなーと。かくいうわたしも英二よりアッシュに感情移入
することが多かった。
英二の方が癒し系で母性的で三歩下がってアッシュを見守るという、
一昔前の女の子の役割そのものなんだけども、だからこそ余計に
そんな肌に合わない役回りはゴメンだと思いますねー。
ガンガン敵をぶっ殺して自分の手で邪魔者を排除し、傷ついて疲れ果てたら
献身的で懐の深い精神的に強い男(英二)に癒される。
そーいうアッシュのポジションの方がわたしの夢です。ドリームです。
と掲示板に書いてからネットをさまよっていたら、こんなことを書いている人を見つけた。
この日本人英二の役回りは、アッシュを「ただの完全無欠の超人(形容矛盾のようだが漫画では月並みな薄っぺらい設定といえる)に堕する」ことから救い、多くの少女たちの心を「キュン」とさせるのに大いに貢献していると思う。性格的にも「女性的」であり、容易に自己投影が可能なようになっている。もっとも、今時、「女性だからこういう女性的キャラに響きやすい」と考えることは先入観、もしくは時代錯誤かも知れない。
この「英二」のような「性格的な強さ、包容力、毅然とした態度をベースにしながら、しなやかで細やかな心遣いが出来る」という形での「女性的要素」という人物造形は、とても興味深い。
アッシュは不安定な存在で、敵意を持って近づいてくる者には「オレの魂をかけて逆らってやる!!」状態になるのに、「好き好き」と無防備に好意をさらけ出す者に対してはもうまったく逆らえなくなる少年である。
(わたしもどっちかというとこういう性格だが)
美貌の中国人青年ユーシスいわく「敵には強いが守るべき者に対しては本当に弱い人間」。
好意を示すこと、他人に対して無防備になることが難しいからこそ、それをやすやすとできる人間に対しては無条件に惹かれ、庇護欲を抱いてしまう運命(さだめ)なわけだ。
それに比べて一見ヘタレ弱そうに見える英二の本質的な強さは、自分が世界に受け入れられていることを確信している者の強さであり、「他者を受け入れる」ことを知っている者の強さでもある。
つまりは地に足がついている。精神的バックボーンが頑強なんである。
だから人に優しくしたり、好意を示すのにいちいちためらわないし、心を開くことにおびえたり、前もって傷つけられることを想定したりしない。
(これは愛されて育った英二と、無条件の愛を与えられず、人間の汚さを見せつけられて育ったアッシュとのどうしようもない違いであるのだけど)
ゆえに不安定な思春期の少年少女としては、英二よりアッシュの不安定さやナイーブさの方によりシンパシーを感じるし、自己投影しやすいのだ。
とはいえ昔はアッシュの気持ちしか解らなかったわたしでも、年を取るにつれて「好きな男が弱っている時に側にいてギュッとしてやりたい」という気持ちが解るようになってきたので、読み返すとアッシュと英二、双方に感情移入している自分に気づく。
この二人の友情が女の目から見てうらやましく思えるのは、その強い絆はもとより、とにもかくにも男同士なので、一方が完全に「お母さん役」をやらなくて済むためだろう。
「お前は女なんだから俺のお母さんと同じように愛してくれ」
などという無茶でむかつく(無言の)要求をされず、相互に支え合って生きていきたい。
とかいうドリームがある者からするとかれらの友情ってのはうらやましくてうらやましくてならないわけだ。
好きなシーンもたくさんある。アッシュが夜中に悪夢を見て飛び起きた時、英二が気づかないふりをしてベッドに横たわったまま、「アメリカの神様、日本の神様、もしいるのなら何でもいいから彼をお守りください」とアッシュのために祈るシーン。
アキレス腱である英二と一緒にいると命を落とすことになる、というブランカの忠告に対するアッシュの台詞。
「オレは今幸福なんだ。この世にただ一人だけは・・・なんの見返りもなくオレを気にかけてくれる人間がいるんだ。こんな幸せな気分は生まれて初めてだ。
もうこれ以上はないくらい――― オレは幸福でたまらないんだ」
ラストシーンは再読時にも開くのがいやで、そこだけはあまり読み返していない。
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