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2005年8月 2日

失踪日記

● 吾妻ひでおが「萌え系」に与えた影響というのははかりしれないものがあると、この人の描く美少女を見るたびにつくづく思うのだが、当の本人は萌えよりSFが描きたかったらしい。この単純な線の中に「萌え」(『少女』に対する夢と妄想)が凝縮されているのだと思いつつボールペン一発描きで模写してみる。
難しい〜。似てね〜。
単純なのに相当描き慣れてないと似せられない絵ですよ。目鼻の配置とか輪郭のまるみが絶妙なんだな。ちょっとでもズレると途端に「あづま絵」じゃなくなってしまう。なんとなく竹本泉風でもあるような。


というわけで唐突におすすめ漫画、吾妻ひでおの「失踪日記」。実は発売直後に読んでいた。
鬱病・ホームレス・アル中・精神病院措置入院と、シャレにならない人生を送ってきたのね。あの人。(この失踪日記の他は、不条理日記と数冊しか実は読んでないので、そんなことになってるとは知らんかったんだが。)
ホームレスやってる時にケーサツに保護され、たまたまそこの若い警官に吾妻ひでおのファンがいて、
あづま先生ほどの人がなぜこんなことに〜!
と嘆かれるあたりが秀逸。(実話だってところが。)
その後でその警官に色紙を渡されて美少女を描かされ、「『夢』って入れて下さい」とかリクエストされるあたりもネタでも何でもないところが爆笑。ホームレス生活が長くて、ボロボロになってるあじましでお相手にだよ。
ギャグ漫画家は悲惨な話を描いてもお笑いにしてしまう悲しい生き物だな。


大泉実成の「消えたマンガ家」を読んでいたので、漫画家、特にギャグ漫画家の消耗度は想像を絶するものがあるということは知っていた。「ギャグ漫画家の寿命は4〜5年」という話も聞いたことがある。
常にテンションを高めていなければならないし、毎回(週刊連載だと毎週)、新しいギャグのネタを出さなければならないので、えんえん試合の場面を描いてりゃいいスポーツ漫画とか、バイオレンス漫画とは比べものにならないほど心身共にボロボロになるという。加えて本人がその状態でも笑える漫画を描かなければならないという過酷さ。鬱病になる率も相当高いらしい。


aduma3.jpg
©吾妻ひでお 失踪日記



● ついでに他の漫画の話を駆け足で。
広江礼威の「ブラック・ラグーン」は銃撃シーンが映画並みに臨場感あってスゲーと思う。えんえん続くバイオレンスがあまりウザく感じないのはBANANAFISH以来。人物配置やドライな人間関係などがちょっとカウボーイ・ビバップの影響を受けてると推測。
吉田秋生の「イヴの眠り」は近未来SF(人工的に脳を進化させた「新人類」をめぐるサスペンスアクション系)で、この人の作品にしてはめずらしく美少女が主人公。美少女っつっても萌え系じゃなくて、わたしの好きな「運命に反抗し闘う美少女」だけど。
前作の「夜叉-YASHA-」を読んでないとわけわからんところもあるかも。
岩原裕二「いばらの王」は映画「CUBE」とか小説「クリムゾンの迷宮」系。不治の奇病「メドゥーサ」と、閉鎖空間に蔓延するモンスターと両方から逃げきって脱出をはからねばならない、という物語構造。すぐにゲームにできそうな話だな。


デスノート」は6巻まで出てるがやっぱりL(竜崎)の復活はないのか。
主要キャラをあっさり殺してしまうことといい、グチャグチャと難解複雑で流し読みじゃ理解できないデスノートの行ったり来たりといい、低年齢層の読者をまったく無視している感じが今までのジャンプの看板漫画とはつくづく違う。少子化による売り上げ不振でとうとう本格的にターゲットを大人や腐女子に変えざるを得なくなったか。他の雑誌ならともかく、「ジャンプまで…」と思うと感慨があるなあ。


わたしはおもちゃ買いあさってるオトナだからこの傾向が業界全体に共通するものだということはよくわかっている。
ドール、食玩、少年漫画。すべて、大人をターゲットにすることで精密・複雑になり、芸術性もアップし、仕事に妥協を許さなくなっている。
文化的には進歩なんだろうけど、子供が産まれてこない情勢とリンクしてると思うと、これも国が滅び行く前兆かという気もしてちと不吉。


妥協を許さないといえば、冨樫義博「HUNTER×HUNTER」はとうとう22巻ですがー。
この人の「幽遊白書」終了に至るゴタゴタに関しては、前述の「消えたマンガ家」にも詳しい。それによると、「幽遊」の終わり頃から冨樫氏はアシスタントを使わず、全部一人で描かないと気が済まなくなったそうですね。
だから下書きだけの原稿が雑誌に載るのも、それに申しわけ程度の手を加えただけに見える状態の作品がそのままコミックスになってるのも、「アシを使わない」という決心に対して妥協を許さない姿勢の表れではあるんだけど、その結果としての作品は「このあたりの完成度で出版してしまう」妥協だらけの産物であるという皮肉。
まあなんだかんだいって内容は面白いから読んじゃうんだけど。(ワンピよりハンタ派だしなー)


他にも色々読んだんだけど忘れた。


4872575334失踪日記
吾妻 ひでお
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black3.jpg● 余った画像の使い回し。ひとつのドールをけっこうな枚数撮影していながら、UPするのはごく一部なのでもったいない。たまに廃品利用しよう。(つーか放置してる裏にUPすればいいんだよな)
これはピュア・バイオレットの胸元アップね。このmomokoはボディに蝶のタトゥーがあるのがポイントなので、それを見せたかった。人形なのに口元とか色っぺーなー。


black5.jpg
しばらくキャスケットかぶせたままだったのでボサボサ頭になったバイオレットさん。



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投稿者 : ナツ at 2005/08/02 | カテゴリー : コミックス
コメント

投稿者 : さとぴー at 2005年8月12日 08:51

吾妻ひでおさんの模写絵、すごいですね。普段模写しているんですけれど、ここまでは描けません。


投稿者 : イカフライ at 2005年8月12日 18:39

 「失踪日記」驚いたなあ。
 最近、吾妻先生の作品見なかったけれど、多分早川あたりのSF雑誌のイラストとかたまに描きながら印税で悠悠自適に暮らしておられるのであろう、と思っていたので、警察官ならずとも
「あづま先生ほどの人がなぜこんなことに〜!」
と思ったんですよね。
 つげ義春先生も「無能の人」そのままの生活をなされていたとか。
一世を風靡した作家が最期は四畳半で孤独死、なんて話はよくよく耳にはしましたが、このように描かれるとショックでした。

 自ら選んだ職業とは言え、マンが家って本当になんの保証も無いんだ、とも思ったと同時に、ホームレスというのは、単に経済的逼迫だけななく誰にでもなる可能性があるんだなあ、ということを感じました。

 少し作品の話とはずれますが、以前ある掲示板でホームレス問題に付いて話したことがあります。ホームレス支援をする市民団体の活動に参加している人、行政側でホームレス対策をしている人、警備員として排除する側にいる人、短期間ではあるがホームレス経験のある人、さまざまな意見がありました。
 ここではそれぞれに触れませんが、その中で
「なにかを心に抱えていた人が多き、そういう人があるきっかけ(例えばリストラとか)でそれまでの生活を捨ててしまう」
という発言がイまでも印象的です。
吾妻先生も、自分の描きたい作品と求められているもののギャップに悩んでいたのでしょうね。
 実際、吾妻先生のSF魂は非常に深いと思うのですが、「おたく」「ミニアック」が美少女とやおいに特化しつつあった時代において、それ以外のマニアックが排除されていた流れの中で吾妻先生は「ホームレス」という選択に追いこまれたような気がします。


投稿者 : ナツ at 2005年8月15日 00:21

● さとぴーさん
今まで模写した中で難しかったのは楳図かずおの絵で、それに比べれば単純な線で構成されてる吾妻ひでおのキャラは簡単かと思ったんですが、単純すぎて逆に難しかったです。(一回失敗してたりして。写真の上の方に失敗絵がチラッと見える)
さとぴーさんの吾妻ひでおの模写も見せていただきましたが、お上手じゃないですか。わたしより全然似てる。
手足にあまりくびれがなくてぷくぷくしてて、線に勢いがあるのが特徴ですよね。吾妻せんせーの女の子。
ところで、あんまりいろんな絵を模写してると、影響受けすぎて自分の絵柄が確立しなくなったりしませんか?

● イカフライさん
「失踪日記」を読んで、ここまで自分を突き放せる客観性を持ってると、作家としてはある意味致命的だろうなあと思いました。何故と言うに、自分の作品も客観的に分析・評価してしまえるから、つまらないものはつまらないと冷静に判断してしまう。「俺のマンガは面白い」「俺は天才」という自己暗示が効かなくなるだろうと。
これってアーティストにはまずいことだと思います。特に週刊連載とか抱えてると、自分の客観的な評価では駄作としか思えないものを、時間に追われて延々垂れ流し続けてしまうことになる。そのストレスたるや想像を絶します。
程々の客観性であればバランスのいい作品を生み出せると思うんですが、吾妻ひでおの場合はモロに裏目に出たなと。ところが更にその客観性が「失踪日記」を生み出してしまったんだからやっぱりこの人普通じゃない。
栗本薫みたいに、「私の書くものはすべて傑作」と自己陶酔できれば、駄作を書いてもいちいち鬱にならないで済むのかもしれません。(彼女の場合読まされる方が鬱になりますがー)

しかし、生ゴミ食べて一年くらい生活してても、人間って病気にもならないものなんですね。すごいな〜。(すごいのは吾妻ひでおだけか?)



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『失踪日記』 from 天竺堂通信
 家庭も仕事も何もかも放っぽり出し、どこか知らない土地に逃げてしまいたい…と思う時がある。強い人間ではないから。  半面、強い人間ではないから、実際に逃げ... [続きを読む]

Tracked on 2005年8月 3日 09:29